日本神話や古事記でも登場し、現世とあの世=黄泉の国の境界になるのが「黄泉比良坂(よもつひらさか)」です。

国生みの神話によると、天から遣わされたイザナギとイザナミによって国が造られている途中で、イザナミは自ら生んだ火の神(カグツチ)によって火傷を負い黄泉の国に旅立ってしまいます。

恋しいイザナミを追って黄泉の国に行ったイザナギですが、すでに変わり果てた姿になっていたイザナミは、「しばらくこちらを見ないように」とお願いしました。にもかかわらず、我慢しきれなくなったイザナギは振り返ってイザナミを見てしまいます。

変貌した姿に恐れおののいたイザナギが逃げだすと、イザナミは激怒し軍勢で後を負わせます。が、間一髪のところでイザナギは現世に帰ることができました。
そして、イザナギは黄泉比良坂で「千引(ちびき)の石」によって黄泉の国への入り口をふさいだというお話です。

その黄泉平坂(よもつひらさか)が島根県松江市に今も残っており、黄泉の国に旅立ってしまった亡き人を偲び思いを伝える場所として大切にされています。
駐車場を囲むように進むと石碑と大きな石、ポストがあります。
思ったより狭い空間でしたが、国道9号線からさほど遠くない場所にもかかわらず、緑に囲まれて心が落ち着く別世界のような雰囲気がありました。
昭和15年に建立された「神蹟黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地」と書かれた石碑です。
黄泉比良坂は、古事記では伊賦夜坂(いふやざか)となっています。
これが、イザナギがあの世への入り口をふさいだとされる巨石です。
亡き人への手紙を入れる「天国への手紙ポスト」があり、手紙を持参しても良いし、あるいはこの場で書いてポストに入れておけば、一年に一度、お焚き上げで天に届けてもらえます。

この場でも手紙が書けるように一筆箋と筆記用具が用意されていました。
さらに奥に向かって「賽(さい)の神」へと続く道があります
細くて急な10分ほどの山道ですが、もう少し日常を離れ厳粛な気持ちで故人と語りたい方にお勧めです。
黄泉比良坂は、楽しい観光地というよりも、亡き人を静かに偲び、生前伝えられなかった思いを伝えたり語り合いたくなった時に訪れたい場所です。

この日も、決して便利で賑やかとは言えないこの地に、わざわざ県外からも何組かが訪れポストに投函されていました。

黄泉比良坂(よもつひらさか)
住所:島根県松江市東出雲町揖屋2407
電話:0852-52-2428
24時間利用できます
駐車場:無料有り