加納美術館に収蔵されている作品の作者 加納莞蕾(かんらい)氏は、画家であると同時に平和に尽力した方として知られています。
その嘆願書の一説には「許し難しを許すという奇跡によってのみ人類に恒久の平和をもたらし、『目には目を』ということでは決して達成し得ないということを、これまで以上に強く感ずる次第であります。」と書かれていました。
※「許す」の表記は原文まま
キリノ大統領自身、戦争で日本人によって妻子、兄弟の命を奪われるという悲惨な体験をしたばかりでした。しかし1953年、ついに莞蕾の再三に渡る嘆願書に応えるべく恩赦を与え日本人捕虜全員を釈放しました。
莞蕾氏の並々ならぬ熱意には驚くばかりですが、それに応え赦す決断をしたキリノ大統領の寛容で深い慈悲心、平和を切望してやまない精神にはさらなる感動を覚えます。
一体どれほどの葛藤があったことでしょう。
そして今現在も尚、莞蕾氏の四女 加世代子氏によってフィリピンとの友好交流は引き継がれています。
安部朱美さんの作品にも、戦時下~戦後をテーマにしたものがありました。
壺井栄作 小説「二十四の瞳」の場面
戦争によって翻弄される若い女性教師と子供たちが描かれた名作です。
そして展示の最終章は、残念ながら現在もまだ続く戦禍にさらされる、市井の人々の姿で終わっていました。
安部さんがどんなに心を痛めながら作品を制作されていたかが伝わってきて苦しくなりました。
加納莞蕾氏の思いに重ねた安部朱美さんの人形展は、深く心に残るものになりました。
住所:島根県安来市広瀬町布部345-27
電話:0854-36-0880
開館時間:9:00~16:30
休館日:火曜日
駐車場:無料有り












