金沢に暮らすようになって、もう何年も経ちます。けれど、私は金沢出身ではありません。

だからこそ、金沢で暮らす子どもたちには、この土地ならではの文化を知ってほしいと思っています。観光地を訪れたり、金沢のおいしいものを食べたりするだけではなく、そこにどんな歴史があり、どんな人たちによって文化が受け継がれてきたのかも知ってほしい。

そんな思いから、息子と一緒に「加賀料理親子体験教室」に参加しました。
最初の回は、加賀料理の基本となる「だし」の飲み比べからスタートしました。かつお節やしいたけを使っただしを実際に飲み比べ、それぞれの香りやうま味の違いを体験します。その後は、加賀料理を代表する「治部煮」について学び、親子で調理体験もしました。
2回目は、近江町市場へ。まずは近江町市場の歴史や、石川県で採れる食材について学びました。その後、実際に市場の中を歩きながら、加賀料理人による食材の目利きを体験しました。魚を見るときには、どこを見れば鮮度が分かるのか。普段は何気なく買っている魚も、料理人の視点で見るとチェックするポイントが違います。
実際の市場を歩きながら教えてもらえるので、子どもにとっても分かりやすく、食材への興味を持つきっかけになりました。
3回目は、和菓子について学びました。加賀料理と和菓子は、加賀藩の武家文化や茶の湯文化とも深く関わっています。四季折々の自然を表現した和菓子は、食べ物でありながら、まるで小さな芸術作品のようです。

この日は、森八の若女将に教えていただきながら、息子が季節の上生菓子を2種類作りました。一つはひまわりをかたどったもの。もう一つは海の波と赤いカニを使った涼しげな和菓子です。実際に手を動かしてみると、餡を形づくったり、細かな模様を整えたりするのは思った以上に難しいもの。きれいに仕上げるには、細かな力加減や手先の技術が必要です。
4回目は、小松市の「九谷セラミック・ラボラトリー」で、親子で九谷焼の絵付けを体験しました。何を描こうかと考えて、息子が選んだのは「カエル」。
九谷焼ならではの色の乗せ方を教えてもらいながら、楽しそうに絵付けを進めていました。
そして第5回は、金沢の老舗料亭「大友楼」へ。天保元年(1830年)創業という歴史ある料理店で、加賀料理のおもてなしについて学びました。

まず印象に残ったのが、お部屋のしつらえです。料理が運ばれてくる前から、掛け軸や花、器など、その空間そのものに季節やもてなしの心が表現されています。これまでの講座で「器」や「季節感」について学んできたからこそ、最後に実際の料理店を訪れることで、それらが一つにつながったように感じました。

そして、いよいよ加賀料理のコースをいただきます。特に印象に残ったのが鯛の唐蒸し。加賀料理を代表する料理のひとつを、実際に味わうことができました。唐蒸しは鯛を背開きにしておからを詰めてむしたもの。個人的に「おから」がこんなにおいしいと感じたのは初めて。素材そのものは身近なものですが、炊き方によってこんなにも違うのかと驚きました。

一方、息子には少し苦手なものも。料理の中にあったドジョウは、苦みがあって食べられなかったようです。それも含めて、実際に食べてみなければ分からない経験。子どもにとっては、料理について知るだけでなく、「自分は何が好きなのか」を知る機会にもなりました。