京都・岩倉にある実相院は、黒く磨かれた床に庭園の緑が映る「床みどり」で有名な寺院です。

6月上旬、台風が通過した翌日に訪れた京都は珍しく静かでした。

その静寂の中で訪れた実相院では、床みどりだけでなく、不思議な「時間の流れ」を感じる体験ができました。




実相院とは?写真撮影のルール

実相院は、京都市左京区岩倉にある門跡寺院です。代々皇室ゆかりの方が住職を務めてきた格式高い寺として知られています。

寺内部は撮影禁止ですが、室内から庭園を撮影することはできます。

今回の記事では、写真では伝えきれない実相院の魅力を言葉でお伝えします。




床みどり──時が止まったような空間

奥の部屋へ進むと、突然目に飛び込んできたのが床みどりでした。

磨き上げられた黒い床に、6月の新緑が鏡のように映り込みます。

ガイドブックで見た時はさぞ広いのだろうと思いました。
ところが実際は意外とこぢんまりした部屋でした。

左右の襖は閉じられ、漆黒の静寂の中に浮かぶ新緑は、まるで遠い昔の写真を見ているようでした。そこだけ時間が切り取られ、静止しているように感じられました。



還暦雛と時を重ねた美しさ

床みどりの次に印象に残ったのが還暦雛でした。

落ち着いた茜色の着物をまとったお内裏様とお雛様は、ひときわ強い存在感を放っていました。

一般的に桃の節句に女の子の行事として飾るイメージが強い雛人形ですが、還暦を迎えた人をまるで子供のように祝う還暦雛という文化に少なからず衝撃を受けました。

還暦には「暦が一巡して子どもに還る」という意味があるそうです。



いぶし銀になった寺紋

出口付近の襖に目を向けると、寺紋は時を経てところどころ箔落ちし、その下に見える銀粉が微かに光っていました。

調べると「実相院菊」という寺紋だそうです。
これは陰と陽の「十六葉菊」を上下に重ね合わせてできたデザインです。
菊は皇室ゆかりの寺である証です。

かつては雅やかだった銀箔が、年月を重ねていぶし銀へと変化していた姿が印象的でした。



実相院で感じた三つの時間

還暦雛は、暦が巡り再び始まる「旧から新」の時間。

いぶし銀になった寺紋は、「新から旧」へ移ろう時間。

そして床みどりは、まるで時が止まったような時間。

京都には多くの名所がありますが、実相院で出会ったのは、三つの時間が存在する、しっとりとした静かな美しさでした。
実相院の拝観時間は9:00-17:00です。
小さな寺院ですが、ゆっくり拝観する醍醐味があるため余裕を持って行くことをおすすめします。

https://www.jissoin.com/access/