境港市にある「水木しげる記念館」リニューアル3周年を記念して、長女である原口尚子さんを迎えてトークイベントが開かれました。

25年7月13日境港市の市民交流センター みなとテラスで開かれた講演会では、「娘からみた 父水木しげる」というタイトルで、原口尚子さんが「お父ちゃん」の家族しか知らない父水木しげるについて、約1時間楽しく語られました。
今回初公開のエピソードもあり、地元出身の漫画家 水木しげるのコアなファンも大いに楽しめた講演会でした。

今回は70名ほどのこじんまりとした集まりだったのですが、NHKも取材に来ており地元のニュースで放送されました。
※写真撮影は許可を得ています
水木さんと言えば、マイペースな方、そしてよく食べる方だったことは有名です。地元の特産であった赤貝、板わかめ、カレイ、芋、そして、昔は東京では見かけなかった棒タラも大好きで、それらが東京に送られてくるのを楽しみにされていたそうです。

そして、境港と言えばカニですが、例にもれず水木さんも大好きだったようで、妻の布枝さんが半分にすると、あとは器用に自分でカニの身をとって食べておられたそうです。
家庭内ではご家族が水木さんの左手が無いと全く意識しないくらい、ほぼ何でも一人でこなしておられたようです。
今回初出しとなったエピソードは、ずばり「高級な肛門」です。
水木さんはオナラ好きでも知られていて、家庭でもオナラは恥ずかしいものではなく「今のは音が良かった!」など水木家では評価の対象ですらあったそうです。

水木さんは2015年11月11日に自宅で転倒されて入院、その後2ヶ月で急逝されましたが、その際、検死があったそうです。
そこで医師からご遺族に知らされたのは、なんと「水木さんの肛門は高級です」という言葉。
生前、ご自分の肛門は高級だ!(良い音が出るの意味か)とご自慢されていた水木さんの言葉を裏付けるような医師の言葉に、さぞかしご遺族は驚かれ「さすがお父ちゃん!」と感心されたことでしょう。

水木さんらしいエピソードで、悲しい中にもほっこりしました。
そして、今回の講演では、さすが博学な水木さん!と思えるエピソードもありました。
原口尚子さんが子どもの頃、父親に買ってもらった本、よく見ていた本を持参されていたのですが、その選択が一般家庭の幼児向き絵本とは違っていました。

持参された本は、「ブリューゲルの世界」」「鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集」「かいじゅうたちのいるところ」「おやゆびひめ」「ファウスト」「エルマーのぼうけん」です。

「鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集」は現在放送中の大河ドラマ「べらぼう」でも作者名が少し登場していました。水木さんは民族学にも通じこれらの古書から得た絵柄やインスピレーションを参考に妖怪を描かれていました。

中でも「おやゆびひめ」は絵が素晴らしいと絶賛されていたお気に入りだったようで、尚子さんが欲しいと言った友人にあげたところ、「今すぐ取り戻してこい」と叱られたそうです。
確かにアニメっぽくない繊細に作り込まれた絵のすてきな絵本でした。

そして、ゲーテ作「ファウスト」には驚きました。
どんなに幼くても、子供にはいつも「本物」を与えたいという水木さんの子育て論が見えるようです。
実際こうして尚子さんの心に長く残る大切な宝物になっています。
会場は鬼太郎グッズを身に付けたり携帯するコアなファンの方がたくさんおられました。
地元の鬼太郎グッズのお土産店の御主人らしき方も、今日は商売は二の次と参加されていました。
境港市の水木ロードにある「水木しげる記念館」はリニューアル後、戦争に関する展示も増えて、水木さんが実際に体験した戦争体験を後世に伝える施設にもなっています。
そんな戦争の話も出た講演会、機会があればまた参加してみたいです。

みなとテラス(会議室、市民図書館が入っています)
住所:鳥取県境港市上道町3000
電話:0859-46-0471
開館時間:9:00~22:00
駐車場:有り